最近、拒食のお子さんをもつ親御さんからカウンセリングで相談を受けることが増えてきました。
そこで痛感するのは、どの親御さんも娘さんを愛しているんですよね。
でも、その「愛情」が「心配」にすり替わり、子供を縛り、素直さに蓋をしてしまったり。親御さんの愛情がから回ってしまって、娘さんに届いていなかったり、傷つけてしまっているのでしょう。
今回はご家族向けの記事です。摂食障害のお子さんをもつご家族さまの参考になれば幸いです。
拒食=痩せた体に安心感を感じている状態
摂食障害克服のキーワードになるのは「安心感」だと思っています。
摂食障害のお子さんのほとんどが思春期をすごされているはず。そのくらいの年代の子であれば、将来のことや何かしらの不安を抱えながら学生生活を送っていたはずです。
しかし、拒食の状態に陥ってしまったのは、他に「安心感」を感じられることがなかったから。唯一、自分の自信になっていたスポーツが、怪我でできなくなってしまったため、安心できる場所が奪われてしまったのでしょう。そこに、痩せることに喜びを感じ、痩せた体に安心感を感じるようになり、手放せなくなってしまったのでしょう。
そうなった場合、家族にできることといえば、それに代わる安心感をつくってあげ、娘さんの自己肯定感を高めてあげることにあると思います。
以下、ヒントになれば幸いです。
お子様のためにできること10個
1、摂食障害を正しく知る
摂食障害を「いき過ぎたダイエット」「わがまま」と思われる親御さんも少なくありません。お子様の1番の見方になれる親御さんこそ、摂食障害という病気を正しく理解する必要があります。というのも、正しくない知識だけで接するほど、娘さんの症状が悪化したり、親子の溝が深まります。世の中には様々な情報が溢れ、正直まとはずれな見解も散見されます。まずは、私が信頼できる下記の記事で紹介している3冊を読んでみてください。そして、よければ私のまとめ記事を順番にご覧になってください。
ただ、摂食障害を治すための「正解」はありません。多くの方にあてはまる対処法を紹介していますが、それが必ずしも娘さんにフィットするかはわかりません。ただ、その中で一番大切なのは、「お子様のどんな気持ちも否定せず受け入れる心構え」と「安心感をシェアできる信頼関係」だと感じています。その詳細については下を読み進めてください。
2、過去を振り返り、母親が気持ちをあらためる
摂食障害の原因を考える上で、過去のご家族の関係を振り返ることは、カウンセリングの中でよく行われます。
お子さんが小さい頃から、親のしつけが厳しく、ありのままの感情を出すことを妨げられ、親の期待に添う人間を演じ続けたとします。するとお子さんは常に人目を気にし、自分に自信が持てず、何かうまくいかないとすぐ強く自分を責めるようになってしまいます。
そんな覚えはありますか?
過去のことを今、ご家族が自分たちを責める必要はありませんが、もし心当たりがあるのであれば、今後は、お子さんが素直に気持ちを表現できる環境を整えてあげることが大切でしょう。
3、親の恐れを子どもに押し付けない
お母さん自身が完璧な母像を抱いてませんか?
「こうあるべき」「今の自分はダメだ」などと考えることはありませんか?
「人は鏡」と言うように、そうやって自分に完璧を求めようとすると、ついつい子どもにも無意識に完璧主義を求めてしまいます。
お子さんは完璧を求められるあまり、それに達しない自分を否定するようになり、どんどん自己肯定感が低くなってしまいます。
「人は自分の鏡」と言うように、自分にも、相手にも、完璧を求めず「ダメなところがあってもいいじゃん」「私は私、あなたはあなた」という心構えでいられるといいですね。
4、子どものいいところに目を向け伝える
お子さんはきっと、今は病気のせいもあり、痩せることにしか興味がなかったり、将来に関して何も考えたくない状態なのでしょう。
しかし、それは病気の心が邪魔をしているだけで、本来の娘さんらしさであったり、キラッとひかる長所は別にあるはずです。
そこに目を向けて欲しい。
そして、「あなたのこういうところ、いいと思う」などと、声をかけてあげて欲しいです。
今の娘さんに「食べなさい」「痩せても仕方ないのよ」などという言葉をかけても、逆に娘さんは自分を「否定された」「ダメな人間なんだ」と思ってしまいます。
5、強要しない・否定しない
子どもに日頃から何かを強制したり、否定したりしていると、無意識に自分から話さなくなります。
そういう言葉は使わないようにし、娘さんがなんでも話しやすい雰囲気をつくってあげて欲しいです。
そのためには、当たり前ですが、全て受け入れてあげること。「そうだね」と、まずは相手の話を全部聞いてあげてください。それが、お母さんへの安心感に変わるでしょう。
6、失敗しても、ありのままのあなたでいいんだよ、と全肯定してあげる
なんども言っていますが、お母様自身が、子どもの安心感になって欲しい。
もし、娘さんが新しいことに挑戦することに迷って、怖がっているのであれば、「失敗しても成功しても、あなたの一番の味方だよ」ということを伝え続けて欲しいです。
お子さんに何と声をかけていいかわからず、「こんなことを言ったら怒らせるんじゃ?」「傷つけるんじゃ?」などの迷いがあるかと思いますが、お母様から心を開いてあげると、お子さんも本音をポロポロと話してくれるようになるかも。
7、「食べなさい」と言わない
親が「食べなさい」と言えば言うほど、子どもは食べたくなくなるもの。「親に食べなさいと言われたから食べる」と言うのは、根本的な解決になりません。どちらかと言うと「別に食べなくても良いわよ」くらいの気持ちでいてください。
8、食べたことを褒めない
ご飯を食べることが難しいお子様が、いつもより食べると「食べられてえらいね!」と自然とほめてしまいたくなりますが、それは逆効果。お子さんにとっては「食べたね」と言う言葉を「食べ過ぎたね」と変換して受け取る子もいます。お子様は葛藤しながら、食べることを頑張っています。食べたことそのものをほめるのではなく、「おいしかった?」「〜好き?」など、味覚や好みに視点を向けてあげてはどうでしょうか。
9、過活動、排出行動をしなかったら「ありがとう」を伝える
一方、過活動や嘔吐や下剤乱用などの排出行動については、それを止める行動ができた時に「心配してたんだよ、自分を大切にしてくれてありがとう。」と伝えてみることは多くのケースを見る限り有効だと思います。本人は死ぬ思いで、怖さをふりはらって、それらの行動を我慢しています。その努力を「当たり前のこと」ではなく、克服に向けて頑張った努力を認めてあげてください。
10、子どもに尽くしすぎない
「娘のためだけに低カロリーのご飯を作る」「過食嘔吐の食材を一緒に買い出しに行く」「過食費用が欲しいと言われるがまま、お金を渡す」など、必要以上に子どものことを甘やかしていませんか?
摂食障害のお子さんは「痩せていれば、お母さんに心配してもらえる」と言う安心感を求めている場合があります。ですので、「痩せているから特別扱いしてくれる」と感じられる行動は控えるべき。
お母様に求められる行動は、「痩せていても、痩せていなくても態度を変えないこと」。
痩せているからと、必要以上に心配したり、ご飯を特別扱いする必要はありません。
それでもダメなら、カウンセラーに相談する
摂食障害のお子様は小さい頃から「不安」「心配」「失敗」などの内容を言葉に出すことを恐れています。
結果を恐れて自己表現しないと、ストレス要因が解決しないまま行き詰まり、不安、無力感、罪悪感、絶望感が高まり、その結果として、過食などの症状として現れてしまいます。
過食の原因は「不安を言えないこと」なので、カウンセリングという安全な場所で、不安を言葉にする練習をすることが大切になってきます。カウンセラーに少しずつ不安を吐露することで、結果的に自信がつき、自己肯定感が高まります。
また、摂食障害を親子で向き合うということは、「お互いがよりより人生を歩むため」に大切なことです。確かに向き合いはじめは嫌な思い出を掘り返したり、言いたかったけど言えなかったことを伝えあったりで苦しみも伴います。しかし、それらを乗り越えた時、かならずより良い関係になることができます。
摂食障害は長引けば長引くほど、治すことが難しくなってきます。カウンセラーに相談することで、治る速度がグンと早まります。お母様も一人で抱え込まず、専門家に相談することをオススメします。