【質問】過食をしても、嘔吐をしたら太らない?
Instagramでゲリラ的に当事者の質問を集めています。
インスタのストーリーかYouTubeで抽選で解答していくので
よかったらご覧ください。
今回の質問は「嘔吐をすれば痩せるかどうか」について。
きっと過食症状のある摂食障害さんがぶち当たる問題だと思いますし、カウンセリングをしていても「嘔吐を覚えたいです」という相談をもらうことが多々あります。
今日は、嘔吐を覚えたらどうなるのか、果たして痩せるのかというお話をさせてください。
【経験談】嘔吐をしつづけ、体重が増えた話
まず、私自身の経験をお話しさせてください。
私自身も拒食から過食に転じ、発症前の体重に差し掛かった時に体重増加を受け入れることができずに嘔吐を練習した人です。
そして、拒食期間が約1年半に対し、過食嘔吐の時期は9年ありました。
つまり、摂食障害10年間のうち、9年間は過食嘔吐でした。
まず、過食嘔吐をしたら痩せたかどうかという話ですが、私の場合は9年間の間、過食嘔吐しながら体重が増えた経験が3回あります。
【1回目】
過食嘔吐を覚えた時が45kgでしたが、結果的に過食嘔吐しながら1年かけて52kgまでじわじわ太っていきました。
【2回目】
また、大学受験時にまた拒食(+ときどき過食嘔吐)になり37kgまで痩せ、大学入学後は過食嘔吐しながら45kgまで増えました。
【3回目】
会社員時代は入社時は45kgでしたが、2年間で52kgまで増えました。
このときは、食事は基本拒食で、金曜土曜のみ過食嘔吐でした。
この経験から思うことは、拒食から過食になった時45kgのときに過食を受け入れ、体重増加を受け入れていたら、私は52kgまで増えることはなかったかもしれませんし、のちの9年間も摂食障害に苦しむことはなかったと思います。
過食嘔吐のおかげでストレス発散ができ、生き延びられたとも考えられるけど、過食嘔吐さえなかったらもっと青春を謳歌できたと思うし、会社員時代も自分のパフォーマンスを上げられただろうな、と思うと、私は嘔吐に手を出してよかったとはどうしても思えないんですよね。
過食嘔吐患者の実情
また、私のクライアントさんの半数は過食嘔吐です。
そして、過食嘔吐のクライアントさんのうち、半数は低体重ですが、半数は標準体重以上です。
標準体重以上の方は、過食嘔吐をしながら省エネ体質になり、食べても太りやすい体になった方がほとんどです。ただ、彼女たちは好きなものを好きなだけ食べているかというと、普段は拒食的な食事をして、反動で過食嘔吐を繰り返しています。低体重の方は痩せた体に心の支えを求められますが、彼女たちは痩せた体にも心の支えを求められず、希死念慮が強い印象です。本当に苦しそうですし、私自身も過食嘔吐しながら標準体重以上だった時ほど苦しい時期はありませんでした。
低体重の方も基本的には拒食で、過食嘔吐の時だけ好きなものを好きなだけ食べる傾向があります。
ただ、低体重の方の半数は40代後半以上という傾向があります。
つまり、このことから何が言えるかというと、過食嘔吐で低体重を維持することは可能ですが、その方法に依存してしまうと40歳をすぎても過食嘔吐から抜け出すことが難しいということ。
そして、いざ過食嘔吐を治そうと思っても、10年単位で身についてしまった過食嘔吐中心の生活習慣は、なかなか手放すことが難しいです。もちろんクライアントさんはものすごく必死に頑張り、一歩ずつ回復されています。ただ、10代・20代の子に比べると心よりも「生活習慣」として身についてしまっている面が強く、本人の意思だけではどうにもならないことも多く、回復まで比較的時間がかかる印象です。
結論:嘔吐して痩せるかどうかは人それぞれ
今回の問いの「嘔吐すれば痩せるかどうか」について言えば、「人それぞれ」というのが答えです。
ただ、一つ言えるのは過食嘔吐はいつか「コントロール不能になり、摂食障害が悪化する」ということです。
始めは「気晴らし」感覚で嘔吐をし、コントロールができているけれど、嘔吐が癖になると「意志に反して食べて吐く」ようになり、摂食障害が10年単位で治りづらくなります。
摂食障害、というより依存症の領域になるんだよね。
あらためて、ここで過食嘔吐のデメリットをお話ししておくと、
【過食嘔吐のデメリット】
・食事と嘔吐がコントロールできなくなる
・嘔吐のスッキリ感が罪悪感に変わり、希死念慮が強くなる
・依存症としての治療が必要になる
・嘔吐を続けると、代謝が悪くなり、食べても太りやすい体になる
(現に、私は徹底的に過食嘔吐をしていたのに10kg増えました)
・嘔吐に依存すると40歳を過ぎてもやめられない人が多い
だから、私のスタンスとしては、嘔吐の覚えようとするのは賛成できません。
SNSには好きなだけ食べて、過食嘔吐で痩せている人も見かけます。
それで彼女たちが幸せなら、私はそういう生き方もありだと思います。
でも、彼女たちも数年後には、代謝異常になって吸収していないのに太り始めるか、50歳をすぎても過食嘔吐三昧の人生を送る可能性が高いとも考えられます。
だから、長い目で見たら彼女たちの人生は果たして幸せか?と言われたらわかりません。
過食嘔吐をする人がよく「過食嘔吐を手放すことが怖いのは、好きなものを好きなだけ食べられなくなる快感を手放すことが怖い」という言葉です。
ただ、過食嘔吐しなくたって、好きなものを美味しく満足するまで食べて、体型維持をすることは可能なんですよね。
私は、過食嘔吐に手を出さなくても、食事を満足して食べられる人が増えてほしいなと思ってこのような発信をしています。
過食嘔吐している人を否定するつもりもないし、かつての私もそうだったから本当に苦しんでいるんだろうなと想像できます。
だけど、過食嘔吐は病気です。痩せる手段ではありません。
一人でも、過食嘔吐で人生を台無しにする人が減ることを願ってます。