カウンセリングをしていると、摂食障害を抱えながら、妊娠することを悩んでいる方の相談を受けることがあります。
こんな質問をいただくこともあります。
相談者:まよさん
過食嘔吐5年目で妊娠5ヶ月です。あかねさんも出産されたとのことですが、検診ごとの体重測定などで、お医者様から体重管理など厳しく言われたことはありませんか?変わって行く体型と気持ちの変化など教えて欲しいです。また、精神状態もあまり良くなく、過食や嘔吐もしてしまいます。「妊娠してるからいっか」と思って、嘔吐する自分を前よりも責めなくなりました。病気を治してから妊娠した方がよかったんですかね・・・意見を聞かせて欲しいです。
まず、妊娠おめでとうございます!命を授かることは奇跡なので、お身体を大切にすることを第一に考えてください。ちなみに、私の妊娠出産期の体重の変化をまとめたものがこちら。
私には2人の子供がいますが、今回は妊娠と摂食障害についてお話しします。
摂食障害を治してから妊娠した方がいい
まず「摂食障害を治してから妊娠したほうがいいか」については、科学的には「どっちがいい」とは誰にも言えません。
今までなんともなかった人が、妊娠中の体重制限を引き金に摂食障害になったり、出産後にストレスで発症する方もいます。
一方、妊娠がわかって、子供のために健康的になろうと決意し、摂食障害を治された方もいます。
一概にどうとは言えませんが、何が引き金になって症状が悪化するかは誰もわかりません。
ただ、私の考えとしては、現在(妊娠していない状態で)過食嘔吐を毎日していたり、基礎代謝量の食事も食べることができない方は、摂食障害の症状が緩和してから妊娠した方がいいでしょう。
というのも、妊娠中はつわりで、食べたくても食べられなかったり、食べたくもないのにホルモンバランスで食べ過ぎたりということが誰にでも起こります。コントロールできない食欲や気持ち悪さによって気持ちも乱れますし、抑うつ傾向になることは多くの妊婦さんが経験します。
ただ、一つ厳しい言い方をすると、摂食障害の症状はコントロールできませんが、妊娠はコントロールできるもの。
妊娠中、過食嘔吐をしない約束ができますか?
必要量の栄養補給ができますか?
体重増加をうけいれられますか?
出産後、子育てのストレスを過食嘔吐以外で発散する方法を思いつきますか?
子供を置いて、過食嘔吐しない自信がありますか?
もし一つでもNOであるならば、子どもをつくるタイミングは今ではないのかもしれませんね。摂食障害を抱えたまま妊娠したり育児をする不安があるのであれば、今はまだ早いのかもしれません。ただ、妊娠をきっかけに治す覚悟ができる方もいるので、これ以上は私がとやかくは言えません。ご自身で判断いただきたいです。
摂食障害を治さずに妊娠した場合の懸念点
では、摂食障害を治さずに妊娠した場合、どのようなことが懸念されるかを3つお伝えします。
妊娠中の懸念1:低栄養状態
妊娠中はつわりで、思うように食べられない人も多いです。
私は妊娠中、気持ち悪くなり、嘔吐は過去の教訓から怖くてできなかったのですが、胃がムカムカして、思うように食べられない日々が続きました。
しかし、母体の低栄養状態が続くと子どもに悪影響を与えると言われたので、頑張って栄養を取るよう心がけました。
妊娠中の低栄養やストレスが子の高血圧の原因に 遺伝子レベルで解明の記事には、「妊娠中の低栄養状態は、赤ちゃんのDNAに影響を及ぼし、心の病気、体の病気のリスクが高くなる実験結果が出ている」と書かれています。
私はそんな影響はないんじゃないかな〜?とそんなに信じていないのですが、実験結果が出ている以上、その可能性は否定できないと思います。
また、低栄養状態によって胎児発育不全(子宮内での胎児の発育が遅延あるいは停止し、在胎週数に相当した胎児の発育が見られない状態)を引き起こす可能性があります。余談ですが、私は2回妊娠し、2回とも胎児発育不全で2500g以下で出産しています(子供は元気に育っています!)。先生には元摂食障害なので「あまり食べていないんじゃない?」と疑われることもあったんですが、出産後の検査で血液系の病気の疑いがあることがわかりました。胎児発育不全は人のよっては流産につながったり、妊娠期間中長い間入院する必要も出てきます。だから、そのリスクを排除できるのであれば、しっかり食べられるようになってから妊娠した方がいいのではないかと考えます。
妊娠中の懸念2:過食嘔吐による流産・早産
過食嘔吐の症状がある方は、妊娠中に食欲がコントロールできずに過食嘔吐をしてしまう可能性がありますよね。
しかし、嘔吐する腹圧で、切迫早産や流産する危険性もあります。
つわりによる自然嘔吐は仕方ないとして、太ることが怖い気持ちからくる嘔吐は自分と向き合うことで症状は緩和できます。
もし現在妊娠中で過食嘔吐持ちの方がいるのであれば、「妊娠中のつわりだから」と受け流さず、自分自身の痩せたい気持ちと向き合ってみてください。今向き合わないで、いつ向き合いますか?と心に聞いてみてください。
妊娠中の懸念3:うつ
妊娠中は「子育てに自信がない」という不安で、眠れなかったり、元気がなくなることは誰にでもあります。
それに加えて、食事が思うようにできず、「母親失格」と自己嫌悪になり、自分を責める…そのようなことになれば、とってもじゃないけれど家族のサポートだけで心を保つのは厳しいと思います。
妊婦の心のケアまで行き届いている産婦人科は少ないので、妊娠中にうつっぽさを感じたら、精神科や心療内科の受診も視野に入れる可能性も出てくるでしょう。
妊娠がわかってからできる生活の工夫
ただ、摂食障害を完治しないまま、すでに妊娠してしまっているのであれば、出産までにできることをしていきましょう。私からは3つのアドバイスをお伝えします。
1、マイルールをゆるくする
出産後は、子供中心の生活になります。自分が寝るのも食べるのもすべて後回しになり、自分のマイルールで決めた食べる時間や、許可食にこだわることが物理的に難しくなる可能性が高いです。
残された出産までの時間は、自分の中のこだわりを少しずつ緩めていきましょう。
2、生活の優先順位を変える
一時的に子供優先の生活になるので、仕事や趣味などのやりたいことをすべて今まで通りできなくなります。
これは、母になる以上仕方のないことです。
私もやりたい仕事を諦め、友達との遊びも我慢するのは辛かったけど、子供を育てるということは、そういうことなのだと思います。
自分の時間よりも、子供に与える時間の方が多くなって当然なのです。
つらいけど、欲張らず自分のやりたいことを少しずつ諦め、それを達成できない自分を許してあげてください。
3、体重管理はゆるくする
産婦人科に通うのであれば、体重管理について医者に何か言われることは避けて通れないでしょう。
私も「増えすぎ!」と言われたこともあったけど、自分の摂食障害の経験から完璧にコントロールできるものではないと割り切っていたので、命に関わらない限り、先生の話を6割くらいの気持ちで聞くようにしていました。
私の友人も妊娠してから20kg増えた人や、10kg以上増えた人もいるけど、多くの方は元気な赤ちゃんを産んで産後は自然と体重が戻っていました。
完璧に体重はコントロールできません。少しくらい理想体重よりもオーバーしても大丈夫です。
摂食障害が治らないまま妊娠した方へ。
もう自分だけの体ではなく、自分だけの人生ではありません。
妊娠は予期してなかったのかもしれませんが、自分で選んだことです。
我が子を守るのは親の役目。
厳しく聞こえるかもしれませんが、まずはこれを機に自分と向き合ってみてください。そして、甘えられるところに甘えてください。
自立した大人になるということは、「誰かに頼りながら生きられるようになる」ということですよ。
つまり、自立とは、依存先が増えることです。
たくさんのものに勇気を出して頼っていく生き方にシフトするいい機会だと思うので、考え方を少しずつ変えていけることを願ってます。