摂食障害が治るということは、
「待てるようになること」だと思います。
例えば、
嫌なことがあったときに、衝動的に食べない
恋人からLINE返信が来なくても平常心でいられる
イライラしてもすぐにキレない
摂食障害の方って全体的にこのような「待つこと」が苦手な印象です。
では、なぜ待つことが苦手なのでしょうか。
今日は「依存症と時間割引率」という観点からお話ししたいと思います。
時間割引率
まず、待てない人の特徴としては
「待つことによって、報酬が今以上増えると思えない」
と思う傾向にある点があげられます。
例えば、
「今すぐ1万円をあげます」と
「1年後に1万1000円をあげます」
と言われたら、どちらを選びますか?
多くの方が、今もらえる1万円を選ぶと思います。
たいていの場合、人は「今すぐできること」の価値を評価する傾向があり、「待つこと」でより大きな利益を得る行動がとても苦手です。
このように、ある将来の報酬が、現在の報酬の価値より、どれだけ低く感じられるかを「時間割引率」と言います。
一般的に、割引率が高い人ほど衝動的・刹那的に物事を判断します。
そして、依存症の人は時間割引率が大きい傾向にあるとされています。
つまり、治療のためには我慢しなければならないとわかっているのに、衝動的に報酬を得るためにアルコールやギャンブル、そして過食嘔吐などに手を出してしまうのです。
衝動をを小さくする方法
では、どうやったら時間割引率を小さくできるのでしょうか。
(つまり、衝動を待てるようになるのでしょうか)
3つ方法を紹介します。
(1)1年後にどうなっていたいかをイメージしておく
まず、摂食障害は今すぐに治る病気ではありません。
1日の積み重ねで、じわじわ良くなっていく病気です。
そのため、今日の改善の積み重ねが大切なんですよね。
だから、今日の積み重ねがどのような効果をもたらすかをイメージしておくことが大切です。
そのために、1年後どうなっていたいかをイメージしておくと、それがモチベーションになりますよね。
例えば、「1年後は過食嘔吐をゼロにして、食べても太りづらい体質になっていたい」という目標さえ決まれば、「多少食べすぎても、これを消化していれば代謝機能が整う」と言い聞かせることができるようになったり、「今日、過食嘔吐が我慢できたら、成功体験として自信になる」と思えるようになります。
(2)衝動的に行動することによるデメリットを自覚する
摂食障害さんは、衝動的に気持ちを発散させたくなりますが、その裏できちんとそのデメリットも自覚しているはずです。
例えば、衝動的に相手にキレてしまったら、「後から切れたことの罪悪感で余計に苦しくなる」と思ったり。
衝動的に食べてしまったら、「後から吐くことが面倒だ」とも思っているはずです。
このように、衝動的にやることによって、あとからどんなデメリットを感じるかをイメージすると、衝動を思いとどまることができます。
(3)待つことができた成功体験を記録する
最後に、待つことができたらその成功体験を記録しましょう。
きっと、過食を我慢できたら「我慢した分、お金を無駄にしなかった」とか
「運動を我慢した分、時間を有効に使えた」など、メリットを感じるはずなんですよね。
その一つ一つの喜びを記録することで、次に衝動が起こった時に思い出すとストッパーになってくれるはずです。
このように、衝動はちょっとした心掛けて治していくことができます。
しかし、ものすごく地道で大変な作業だとは重々承知しています。
依存症の治療もそうですが、一人でこれらの行動を継続することはなかなか難しいです。結局は、自分の意志の問題になり、できなかった自分を責めがちになりますから。
大切なのは、第三者の力を借りること。伴走者と一緒に行動を少しずつ改善する作業をすることをおすすめします。