今回は「回復期拒食」の食事、生活習慣について解説します。
拒食回復期に大切な5つのこと
1.【食事】正常な食欲を回復させるためにも3食食べることは有効
低体重の方は、体の生理的な欲求として過食欲求が起こりやすいです。
これは、栄養を満たしたとしても、食欲がおさまらないことが多いでしょう。
しかし、拒食から過食症に移行するのを防ぐためにも、栄養バランスの整った食事を食べることは、空腹や満腹を感じられるようになるためにも、有効な手段だと思います。
2.【食事】食事を楽しむ練習をする
ただ、拒食症の回復期であれば、まだまだ食べることに対して前向きになれない方も多いと思います。
そういう場合は、栄養バランスをガチガチに考えるよりも、まずはちょっとグルメになって食べることを楽しむくらいでいいと思っています。
それは、食事が義務的なものというより、幸せを感じられる行為であり、コミュニケーションツールでもあるから。
たまにはパンケーキを食事代わりにしたっていいし、スイーツビュッフェを楽しんでもいいと思います。
3.【食事】食事トレーニング×過食を受け入れる
低体重で拒食の方は、食べ始めると食欲が止まらなくなる場合がほとんどです。
しかし、その食欲は受け入れてください。
標準体重までは自然と食欲が増すものです。
残念だけど、満腹感はそう簡単には安定しません。
おそらく体の飢餓状態を解除できる
BMI18を超えたあたりまで過食は続くでしょう。
体重が回復すれば落ち着いてきます。
つまり、食事量を増やせば、体重が増えて、衝動は落ち着きます。
摂食障害は低体重のまま完治することはありません。
克服のためには標準体重ラインまで体重増加を受け入れる必要があります。
しかし、際限なく食欲のままに食べていると標準体重を超えても
過食が止まらなくなる可能性があるので
体の声を聞くトレーニングも重ねましょう。
4.【メンタル】心に向き合う
拒食回復期は「食べることを頑張る期間」だと考えている方がいますが、一番大切なのは「心に向き合う」ことです。
食べる、食べられないは症状であって、本当の問題は心にあるからです。
「痩せたい気持ちの裏にあった、本当の願い」をきちんと言語化しそれに向き合うことで回復期の過食を乗り越えることができます。
逆に言えば、ここで心に向き合うことができないと、標準体重に戻っても本当の問題を解決できず、そこから現実から目を背けられるメリットを求めて過食症に移行し依存する可能性がでてきます。
標準体重に近づいた時に、自分の体型や自分の弱さを受け入れるためにも、心の問題に向き合うことは必須です。
5.【メンタル】カウンセリングを受ける
正直、今までお話しした4つのコツは、当事者一人でやることは困難に近いです。
拒食と過食を繰り返している方は、良い治療者に出会うことができず、自己流で治そうとする方が多いです。
いっときセルフケアできたとしても、また「太りたくない」という気持ちに負けて、拒食に戻ることもあります。なぜなら、摂食障害は「治したい」気持ちと「太りたくない」気持ちが常に葛藤する病気なので、病気の声に飲み込まれてしまうことは普通のことなんですよね。
また、摂食障害の全員に認知の歪みがあるので、自分自身を客観的にみるためにもカウンセラーなど、利害関係のない第三者の専門家に相談することをおすすめします。確かにカウンセリングは金額が高いけれど、治療期間を短縮できるので、長い目で考えることが大切だと思います。
回復期5大質問「過食・体重増加が怖い」
Q1.過食になるのが怖い
過食と、回復期の食欲増加は別物です。
標準体重になるまで生理的に増してしまう食欲は、回復のために必要のものだと思って受け入れていく必要があります。
その食欲は、生理的なものだから過食欲求よりも強いもののように感じます。
ただ、3食のリズムをゆるくでも守りながら食欲を我慢せずにいれば、必ず「もういらない」と思う感覚になる日がきます。
それは、生理が戻る頃に来ることが多いです。
正直ね、過食をやめたければ、低体重でいる期間を1日でも短くすることが鍵です。
低体重でいる期間が長ければ長いほど、過食欲求は大きくなります。
また、摂食障害は「体重が増えても治したい」と思える心を育てていく必要があります。
苦しいけど、もう痩せを手放してもいいと思える心、少しずつ育ってきているんじゃないかな?
では、「まだ体重が増えて欲しくない」と思うのは、どういう理由がありそうかな?
そこに克服のヒントがありそうです。
ただ、「体重が増えても治したい」と思える心というのは、一人で覚悟を決めることも、継続することも難しいです。
だから、先ほどもお伝えしましたが、お医者様やカウンセラーなどの伴走、そして家族のサポートが不可欠です。
Q2.過食欲求をコントロールしたい
回復期の食欲は生理欲求なので、過食をコントロールしようとすること自体が無謀です。
おそらく、回復期の方で食欲をコントロールできる方は稀です。
では、どうすれば回復期をやりすごすことができるのでしょうか。
(方法1)生活の評価軸を別にもつ
過食はコントロールできないものなので、それ自体を評価軸にするのはナンセンス。きっと今は食事が自分自身の評価軸になりがちだと思う。例えば「ピアノが弾けた」「ゲームに集中できる時間が伸びた」とか、他の評価軸で自分を加点してあげてください。
(方法2)食事にいいイメージを持つ
きっと今は「食事=過食につながる」と思っているかもしれないけど、過食につながらないことも意外とあるじゃない?だから、食べる前に「美味しく食べ終わるいいイメージをする」と、食事を終わりやすかったりするよ。言霊じゃないけど、いいイメージを想像すると現実が引っ張られることもあります。
Q3. お腹がいっぱいなのに食べてしまう自分が醜いです。心が弱いように感じる。
何かを爆食したくなるのは、何度も言うけど生理現象という理由が一番にあります。
だから、自制心が足りないというわけではない。
ただ、もしかしたら脳が快感や刺激を欲しがっている可能性が高いんだよね。
つまり、ワクワクしたり、満たされるような刺激的なものであれば、食べ物じゃなくてもいい。
きっと、心が満たされる方法を知らないから、自然と過食に気持ちが向かうんだよね。
だから、少しずつ「食べること以外で快感を得ること」に意識を向けるといいかな。
(それより生理的な欲求が強くなれば、他に興味もわかなくなるのだけど、、)
もし、食べ始めて「食べたいわけじゃなくて、他の刺激が欲しいんだ」と思う感覚があれば、どんなことで自分は満たされたいのかを考えてみようか。
Q4.適正体重の後も過食欲求が止まらなくなりそうで怖い
確かにそういう方もいる。
でも、回復期の間に、食べること以外に心地よさを感じる方法や自分を満たす方法を見つけたり、心の不安にきちんと向き合えば、食べることで何かを解消しようとは自然としないはず。
というより、他の方法を知っているから、そっちを選べるようになります。
低体重で食欲に全ての欲求が負けてしまっている状態から抜け出せば、徐々に食べたいものを食べて飢餓状態を解除できれば、体重が増加すれば、必要以上に食事が欲しいと思わなくなる状態になります。
そのためにも「本音に従って食べること」で体の感覚を取り戻し、「本音に従って食事がいらなくなる」感覚も育てていきましょう。
Q5.治りたい気持ちと、体重を増やしたくない葛藤が苦しい
治りたい気持ちと、痩せていたい気持ちの葛藤で揺れる期間は、今まで抑え込んでいた気持ちが溢れ出る期間でもあるので、イライラや八つ当たり、気持ちの波が大きくなると思います。
その中でも、「素直な気持ち」を否定しないでね。
食べたくない自分も責めないでね。いい波が来ている時に美味しく食べればいいからさ。
そして、もし食べなくない気持ちがあっても、それは病気の声である場合がほとんど。
その中でも「頑張りたい」「ここで負けたくない」と思う自分もいないか確認してみてね。病気の声に本音が隠れてしまっていないかな?
その気持ちに気づいたら「病気を治したい」という気持ちを応援してあげてね。
拒食回復期の生活=ダイエット100%脱出
拒食症の方はダイエット100%の生活を送ってきた方が多いので
これを機に「ダイエット以外で心を癒す方法」を練習してみよう。
きっと全員が拒食回復期は初めての経験。
どんなことでも、初めての経験でいきなり正解を手にできることの方がまれなんですよね。
だから、思い通りに行かなくて当たり前。
「失敗したら、翌日はその失敗を生かしてどう立て直そうか」と考えて行けたらいいなと思います。