過食嘔吐ができるようになった頃は、単純に「たくさん食べても痩せる魔法の方法を手に入れた!」と喜んでいたのも束の間、「1日中過食嘔吐のことを考えて、日常生活に苦しみを感じる」という状態に陥ります。
本日は過食嘔吐の原因、心の状態、乗り越え方を解説したいと思います。
過食嘔吐は依存症
過食嘔吐は一言で言えば、たくさん食べてたくさん吐く症状のある摂食障害です。
しかし、摂食障害の中でも過食嘔吐は「依存症」の側面があります。つまり、依存症の仲間と考えていいでしょう。
だから、アルコール依存症などの仲間と考えていただくとイメージしやすいかもしれません。
依存症のとは、脳内に報酬を求める回路ができあがり、コントロール喪失に陥ってしまい、 やめられなくなる脳の病気です。つまり、脳が報酬を求めてコントロールが効かなくなる、誰にでも起こりうる病気です。
依存症としての症状の特徴は3つあります
・進行性で、脳が報酬を求めてエスカレートする
・性格の変化(嘘をつく、衝動性)
・対処法を学べば、回復することは可能
つまり、過食嘔吐は治療をすれば必ず回復できるのです。
過食嘔吐のタイプ別特徴
カウンセリングをしていて感じるのは、過食嘔吐をしている人は「ガリガリ」とは限らないこと。 あえてタイプに分けると3パターンある印象です。
この中で、快楽型はあまりカウンセリングでお会いすることはありません。そもそも、本人が過食嘔吐をすることに困っていない場合が多いです。
拒食タイプは、カウンセリングでもよくお会いしますが、治療離脱率が高い印象です。それは、過食嘔吐依存度が高い、つまり過食嘔吐が生活の一部になりすぎているから。
また、家族から過食嘔吐のお金を援助してもらっている場合が多く、やめたい気持ちは少しはあっても、デメリットを感じていないケースが多いです。よく、食べ放題など外食する行動が見られます。
ボリュームゾーンは共存タイプ逃避型です。彼女たちは、過剰適応(ある環境に合うように、自身の行動や考え方を変える程度が度を超えている状態)している場合が多く、周囲に期待されやすかったり、仕事で成果を出している方が多いです。周りにはとても素晴らしい人に見えてしまいやすく、周りに過食嘔吐を隠し、過食嘔吐とうまく付き合いながら生活する傾向があります。
- とにかく太りたくない
- グルメ・食べたいものがたくさんある
- 過食が唯一のストレス発散
- 白黒思考(認知の歪み)
- カリウム不足(身体症状)
- 唾液腺の腫れ(身体症状)
- 歯が溶ける
拒食の方と比較して、一番の特徴は「食べることが好き」という点あげられます。
しかし、本人は「食べることを恥ずかしいこと」と捉えている場合が多く、他人の前では比較的拒食傾向があります。
心の状態/自殺率は18%
過食嘔吐の方は見た目は健康的な方が多い一方で、心は一番ダメージを受けている場合が多いです。
摂食障害の症状別の死亡率を見ると、想像以上に過食嘔吐の死亡率が一番高いです。
- 拒食症10%
- 過食症0.3%
- 過食嘔吐18%
拒食症は栄養失調が原因で死に至ることが多いのに対し、過食嘔吐は「吐く」という行為を続けることにより体はかなりの負担を抱え、気分が落ち込む・憂うつになるなどの精神的な抑うつ症状を追ってしまいます。
過食嘔吐は吐くという一時的な帳消し行為により、過食⇨嘔吐⇨飢餓からの過食欲求⇨嘔吐、という負の連鎖に陥り、病気が長引いてしまい、摂食障害が重症化したり、他の精神疾患を併発したりしやすいのです。
過食嘔吐を克服するキッカケ
では、過食嘔吐を「治したい」と思うきっかけは、どういう場合があるでしょうか。
- 過食嘔吐による体力、メンタル、経済的な限界
- 嘔吐しているのに代謝機能の異常により太り始める
- 大切な人を守るため
- 夢を叶えるため
- 他者に迷惑をかけている罪悪感を解消したいから
- 自分自身が臭う、不衛生
過食嘔吐が長く続くほど、克服の道のりは困難になってきます。
できるだけ早く、克服するきっかけに出会うことが大切です。
過食嘔吐の治療法
過食嘔吐は依存症です。当事者本人一人ではすでにコントロールができず、克服できない状態になっている場合が大半です。
克服には周囲の手助けが不可欠。カウンセリングをうけ、ストレス発散方法や自己表現方法を模索する必要があります。自分自身に向き合い、痩せ以外のアイデンティティを見つけることが大切でしょう。
基本:認知行動療法
基本は認知行動療法です。
自分自身の心に向き合い、依存しなければならないほどの心の苦しみを紐解きます。
また、考え方の癖を知り、実践することが大切です。
(1)引き金を知る
過食嘔吐を引き起こす「引き金」をチェックします。
HALTに分けて考え、自分の引き金になるものを知り、それらを感じる原因や、対処法を考えます。
「H(hungry; 空腹感/happy; 幸福感/hurt; 傷ついた)」
「A(angry; 怒り/anxiety; 心配や気がかり)」
「L(lonely; 何もすることがない/孤独感)」
「T(tired; 気疲れ/疲労感)」
(2)正しい食事の知識を学ぶ
過食嘔吐の方は、極端に摂取カロリーが少なかったり、ジャンクフードを普段吸収しない傾向があります。
そのような状態だから体は飢餓になり、過食欲求が起きてしまうのです。
偏った食事を適切なラインに戻し、普通の食事で満足できるようにトレーニングをします。
(3)過食嘔吐以外で自分を満たすものを探す
過食嘔吐をする理由を聞くと
「時間をどうやって過ごしていいかわからない」
という回答がよくあげられます。
「時間を埋めるために、とりあえず満たされる過食嘔吐」
という習慣が定着している方も多いです。
つまり、過食嘔吐に依存しているんだよね。
不健康な依存先の一極集中を克服するためには
「健康的」な依存先を、「数多く」持つことが重要になってきます。
その健康的な依存先とは、「心を満たす心地よさ」だと私は考えます。
心を満たす選択肢は、五感を使って、「小さな幸せ」を感じて心を満たすことです。
誰かに自慢したくなるような趣味や、やりがいのある仕事などに求める必要はありません。
過食嘔吐以外で自分を満たす方法を見つけていきましょう。