【質問】拒食時より、食への執着が増しました
Instagramでゲリラ的に当事者の質問を集めています。
インスタのストーリーかYouTubeで抽選で解答していくので
よかったらご覧ください。
今回の質問は「拒食回復期の苦しみ」について。
きっと多くの摂食障害さんがぶち当たる問題だと思うので、拒食からの回復期の苦しみについてお話ししますね。
【解答】苦しみの根源は、セルフコントロールできないこと
摂食障害に限らず、心の病気の苦しさは「セルフコントロールできない」が根っこにあります。
ここでちょっと豆知識をお伝えしておくと、人は潜在的に5つの欲求があるとされています。
子どもの潜在的欲求
1 他者との安全安定した関係(愛されたい・守られたい・理解されたい)
2 自律、有能、アイデンティティの感覚(有能でありたい)
3 感情や考えを自由に表現し、承認されること(意思を大切にされたい)
4 自発性と遊びの感覚(のびのびと楽しく遊びたい)
5 現実的な制約を設け、セルフコントロールできるようになること(自分をコントロールしたい)
心理療法の中で「スキーマ療法」というものがあり、それを勉強すると出てくるお話しなのですが、ここでは詳しくは割愛します。
拒食時に落ち込まなかった理由
話を戻しまして、、
摂食障害さんはこの潜在的欲求の中の「コントロールしたい」という欲求を満たすことができなくなり、苦しくなるんですよね。
例えば、
「不安な感情をコントロールできない」
さらに「食事をコントロールできない」
さらにさらに、体重をコントロールできると拒食時に思い込んでしまったばっかりに「体重をコントロールできない」という壁にぶつかり、苦しんでいるのだと感じます。
ただ、拒食時は、摂食障害のなり初めで、食事・運動・体重をコントロールできている状態にありました。
いわゆる「ダイエットハイ」の状態で、食事を制限し、体重が減り始めると、達成感や気分の高揚感があり、運動をしても疲れを感じにくくなります。また、自分をコンロトールしているという満足感も得られ、当事者には病気と言う認識は少しもありません。
また、人は飢餓状態になると、苦痛をやわらげるホルモンが分泌され、それがますますダイエットを加速させます。
拒食回復時の体と心の変化
拒食回復時は総じて落ち込みが激しくなります。
理由としては5つ。
・食欲がコントロールできない
・体の疲れを感じるようになる
・周りの人の変化
・体重は増えるのに、痩せたい気持ちは強いまま
・本当の問題に向き合えるようになる
1、食欲がコントロールできない
拒食から食事を取れるようになると、飢餓状態からの反動で食欲が暴走します。でも、心は「痩せたい」と思っているので、食事への執着も強くなり、よけいに苦しみが増します。
2、体の疲れを感じるようになる
何より、食事が取れるようになると体と脳みそに栄養が回り、体の緊張感が解けてくると、今まで無視してきた「体の疲れ」を自覚できるようになります。 特に頑張り屋の摂食障害さんは休むことを悪と考えていたために、人よりも疲れを溜めている場合が多いです。 一度体の疲れを自覚すると、常に体がだるく重たく感じ、人によっては無気力状態になります。
このように、ダイエットハイが落ち着くので、運動も苦しく感じるようになり、体も思うように動きません。
3、周りの人の変化
周りの家族が摂食障害の理解が薄いと、拒食から食べ始め変に安心してしまい、または過食っぽい食べ方に嫌悪感を感じ、当事者への接し方に変化が生じることがあります。
それらの家族の心の変化を繊細な摂食障害さんは感じ取ってしまい、気を遣うことや顔色を伺うことが増え、苦しく感じることが増えます。
4、体重は増えるのに、痩せたい気持ちは強いまま
体の回復が進み、体重は増えても、心の治療をおろそかにしたままでいると、痩せたい気持ちが緩和されず、体は健康体なのに心は拒食のまま、という状態になります。
どうしても回復の順番は体が先ですが、その回復した体を受け入れる心のケアをする必要があります。
5、本当の問題に向き合えるようになる
1番の苦しみはこれだと思います。
拒食の頃は痩せていることによっていろんなことが免除されていました。
しかし、頭に栄養が回り始めると、嫌でも本当に向き合わなければならない問題と向き合わなければならない瞬間がきます。
例えば、勉強の遅れや進路、キャリア、家族の問題など。
それらに向き合おうとしても、そのストレスが大きく、心の拠り所が食事と体型以外にしかないから、余計に食事に執着してしまうこともあります。
でも、だからこそ、拒食の頃よりも頑張っていると私は思います。
痩せたい気持ちに頼りながらも、本当の問題に向き合っていく。それでいいと思うんですよね。
摂食障害回復のためには、本当の問題を解決していくことは避けて通れません。自分の嫌いなところ、家族の嫌なところ、考えたくない進路のこと、たくさん向き合って、折り合いをつけていかなければなりません。それって、ものすごく苦しいけど、乗り越えた先は本当に生きやすい生活が待っています。
いま、ものすごく苦しいのは成長痛のようなものです。
苦しい気持ちがありながらも、心のケアを怠らず、心を満たす時間を多く持ちながら、なんとか乗り越えていくことを応援しています。