お子様が摂食障害になると「子育て失敗」「恥ずかしい」「ダメな親」と、ご家族はご自身を責めがちになります。同様に、お子様も「ダイエット失敗」「人生台無し」「親不孝な子ども」と、自分自身を責めています。
しかし、摂食障害はそのご家族に必要だから発症したのです。
きっと、できれば発症したくなかったでしょう。
過去に10年摂食障害と奮闘した私自身も、できれば避けたかった経験でした。しかし、今では「摂食障害があったから今の私がある」と言い切れます。そして、多くの克服者は「摂食障害になったからこそ、私らしい生き方を見つけられた。病気にはなりたくなかったけど、経験してよかった」と話します。
では、なぜ克服者は摂食障害に感謝すらしているのでしょうか?
それは、摂食障害になる前は「苦しみながら耐える生き方しか知らなかった」ことに対し、発症後に無理する生き方を見直し、「自分の本音に従って生きる素晴らしさ」に気づいたからだと私は思います。
まず、摂食障害さんは例外なく努力家で頑張り屋でいい子です。社会の「正・良・期待」に応えるために誰よりも努力ができ、それなりのいい結果を残してきた子が多いです。
しかし、成績優秀でいることも、自慢の娘でいることも、家族のご機嫌をとることも、全部頑張りすぎて疲れ果てていました。その結果、「もう頑張れない」「休みたい」「誰かに助けて欲しい」という本音があふれ、病的にやせることや、「食べすぎる・吐く・食事ができない」などで、自分のSOSの声を表現したのです。
つまり、無理する生き方に限界がきてしまったんですよね。
だからこそ、摂食障害の回復には、過去の苦しみを正しくとらえ、当事者自身の心の傷や生きづらさを紐解き、本人だけでなく、まわりが理解することが一番大切です。
そして、無理して頑張りすぎなくても生きていける「自分の特性をいかした生き方」を見つけていくアプローチが重要です。
これは当事者だけでなく、サポートするご家族自身も今までの生き方をあらため、一緒に取り組むとより回復が早くなります。
このように、摂食障害を通して、お互いの生きやすい人生を再構築していくのです。
つまり、自分らしく生きるために、摂食障害を通して自分に向き合う期間が必要だったのです。
そう考えると、悩み苦しむこの時間も、意味ある過程です。自分に向き合った分だけ、納得できる人生を送れるようになります。
(先日カウンセリングをうけた別の50代の女性から、カウンセリング卒業3ヶ月後にもらったメッセージ)
私のクライアントだった当事者ご家族が、回復の過程を振り返り「Everything has a reason to happen」と表現されていました。
まさに、な表現ですよね。
摂食障害は当事者とそのご家族全員にとって必要な経験だった。
きっとそう思えたら、自分たちの摂食障害に悩んだ人生すら肯定できるのかもしれません。