トラウマを知る
トラウマとは、何らかの出来事によって引き起こされる心の傷のこと。トラウマによって自分の身に起きた変化を受け入れて過ごしてしまうと、トラウマ症状が悪化して、不安を紛らわせるために様々な心の病気を併発させてしまいます。トラウマによって、心身がどのように変化したかを具体的に知ることが治療の第一歩になります。
トラウマと不安の違い
日常の不安とトラウマの最大の違いは、トラウマは時間が経っても消えず、事件や事故があってから何ヶ月も経過しているのに、その記憶を何度も思い出し、苦しみ続けている状態です。
PTSD
トラウマによる反応のうち、最も特徴的なのがPTSD症状です。PTSDは心的外傷後ストレス障害という病気です。トラウマと関連深い、不安障害やうつ、中には摂食障害を併発する場合もあります。
強いストレスをうけて以下の3つの中核症状すべてが1ヶ月以上続く場合に診断されます。
再体験
トラウマ体験を思い出す
回避
体験を思わせるもの、状況、人などをさける
過覚醒
小さなことを気にするようになり、何でもないことで怒ったりする
トラウマ体験を抱えている人とは
「トラウマ体験とは、それまで当然のものとしてあった自己、他者、世界への信頼が突然失われ、自分が歩んできた人生の道のりから突然突き落とされるような体験」と、水島先生は書かれています。
私たちはコントロール感覚があるから、未来に向かって生きていくことができます。つまり、私たちは未来に対して「まぁなんとかなるだろう」と思っている。しかし、トラウマ体験を抱えている方は「自分で自分の人生をコントロールできている」と言う感覚を失ってしまっている。
トラウマ体験の人の直後には多くの人がPTSD症状を呈するが、最初の数ヶ月は自然回復が多い。嫌な記憶を何度も反芻しては、何が起こったのかを理解しようとしたり、人に聞いてもらって感情を発散したりするなかで、自己、他者、世界への信頼がまた取り戻され、コントロール感覚を回復していく。
この、自然なプロセスの中でコントロール感覚を回復させられない人がトラウマ治療の対象になります。
対処法
対処法はそれぞれの症状に対し、医師やカウンセラーと面談をし、適切な環境で実施します。
主に「(医師の元で)薬物療法」「認知行動療法」を組み合わせて行うことが一般的です。当カウンセリングで行う一例をご紹介します。
▼症状に対して
再体験
(1)安全を確保する
フラッシュバックが起きた際は、まずは安全を確保することが大切。学校や職場に通えない場合は、休める環境を整えます。
(2)記憶をコントロールする
トラウマ体験を思い出すのは自然な反応です。無理して忘れようとせず、記憶と向き合い、制御する方法を身につけます。辛い記憶を認識し、思い出しても怖くない状態まで慣れるようにします。
回避
体験を思わせるもの、状況、人などをさけるため、行動範囲が狭くなります。回避のもたらす弊害を認識しながら、回避しすぎない生活を取り戻せるようにします。
過覚醒
常に強い緊張感を感じているため、小さな物音や人の動きに過剰反応し、何事にも集中できなくなる状態。どこにいても気が休まらなかったり、以前できた仕事ができなくなり、生活が破綻することも。安心できる環境で、時間をかけて和らげる必要があります。
そのほかにも
●症状を正常と考える
症状が出るのは自然な反応だと理解する。トラウマ関連の症状を知識として理解する。
●思考を理解する
罪悪感や自己評価の低下、人間不信など、トラウマ体験の後に怒りやすい思考の変化を理解します。
暴露療法:認知行動療法
トラウマ体験を克服するには、記憶から逃げず、正面から向き合うことが必要です。トラウマ体験をあえて思い出し、トラウマ体験によって変化した考え方と行動パターンを修正します。
周りの人ができること
・共感しながら、話を聞く。アドバイスはNG
気持ちに寄り添いながら、話を聞いてあげよう。必要以上にアドバイスをしたり、解決しようとしなくて良いです。